人事担当者向け
男性育休の取得率って重要⁈男性の家事・育児と組織の成長【秋田県】
2026.01.20

弊社が秋田県より受託し運営を担当した、男性の家事・育児参画意識醸成事業「【人的資本経営の視点から考える】男性の家事・育児と組織の成長」のセミナーが、2025年11月7日(金)に秋田市ANAクラウンプラザホテルにて開催されました。
本セミナーは、職場における男性の家事・育児参画について、その意義や最近の動向について、理解を深めていくことを目的に行われました。
本記事では、セミナーで議論された内容とともに、なんで・なんでが考える「男性の家事・育児」についてお伝えしていきます。
主催:秋田県 あきた未来創造部 次世代・女性活躍支援課
運営:株式会社なんで・なんで
【セミナー当日のプログラム】
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「男性の家事・育児応援セミナー」〜【人的資本経営の視点から考える】男性の家事・育児と組織の成長〜 第一部 13:30〜 第二部 14:00〜 ◉ 基調講演「男性育休取得と企業成長について」 ◉ 時事解説「男性育休取得をめぐる現状について」 ◉ パネルディスカッション「男性育休のリアルと企業の視点:ともに考える働き方の未来」 |
「男性の家事・育児応援セミナー」開催にあたって、なんで・なんでの想い
株式会社なんで・なんででは、男性の家事・育児参画を、単なる制度整備や福利厚生の問題としてではなく、人材育成や組織の成長につながる重要な取り組みとして捉えています。
なぜなら、少子高齢化が進み人手不足が深刻化する昨今、企業が持続的に成長していくためには新たな人材の確保だけに頼るのではなく今いる社員一人ひとりの力を高めその力を最大限に生かしていくことが不可欠だからです。
近年では「育児は仕事の役に立つ」という視点も注目されています。
育児を通じて培われる判断力や調整力、チームワーク、コミュニケーション力は、組織におけるマネジメントや日々の業務遂行にも通じる立派なスキルです。こういったことからも、家庭と仕事は対立するものではなく、互いに影響し合い活かし合える関係にあると私たちは考えます。
本セミナーは、男性育休の取得率といった”数値目標”の達成を目的としたものではありません。育休や家事・育児への参画が特別な決断ではなく、取得したい人が取りやすい職場環境、取得した人を快く応援できる職場環境を広げていきたい。その想いを形にした事例の1つとしてご紹介します。
◉ 基調講演「男性育休取得と企業成長について」

今回、基調講演をしてくださったのが、山形県山形市に本社がある愛和建設株式会社社長 横山隆太様、経営管理部の荒井様です。
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📍愛和建設株式会社 1944年に創業した地域密着型のゼネコン。 現在は85名の社員が在籍。そのうち34%が女性という、建設業界では珍しい構成比を誇る。 |
キーワードは「理解と共感」そして「支援」
建設業界の男性育休取得率が34.6%にとどまる中、愛和建設株式会社は2017年以降、対象者6名全員が育休を取得し、取得率100%を継続中です。
最近では、2カ月以上の長期育休を取る社員の方も増えているそうです。
「特別な施策をしたというよりも、さまざまな取り組みを積み重ねる中で“育休を取るのが自然な空気”になっていった」
と、横山社長は語ります。
その”空気づくり”を支えてきたのが、荒井さんです。
キーワードは「理解と共感そして支援」
愛和建設株式会社が男性育休取得率100%を継続している背景には、「理解と共感」「支援」2つのキーワードを軸にしたそれぞれ3つの取り組みがあるということで、今回お話ししていただいた内容をご紹介いたします!
キーワード①「理解と共感」のための3つの取り組み
1. 社長発信の声掛け
2. 業務の見える化・仕組み化
3. 役員層から長期休暇取得
一つずつ解説していきます。
1. 社長発信の声掛け
横山社長が社長就任以来ずっと大切にしている言葉が、
お客様に 家族に 自分自身に 「心ときめく会社でありたい」
この言葉には、横山社長の「社員がワクワクしながら働ける環境を大切にし、企業活動が社員のモチベーションや地域貢献につながる職場になってほしい」という想いが込められています。
「心ときめく会社」とは、ただ業績が良い会社を示す言葉ではありません。
社員一人ひとりのやりがいや楽しさを重視する会社のことであって、その結果、社員の長期的な定着や育休取得などにも良い影響を与えています。
そんな想いから生まれたのが、家族参加型のイベントです。
愛和建設株式会社では、社員とその家族が参加するクリスマスパーティーや、社員のお子さん(小中学生)へ向けての会社見学会など、みんなが一緒に参加できるイベントを定期的に開催しています。
社員・家族が定期的に顔を合わせることで、同僚同士のコミュニケーションが自然と生まれ「職場全体に温かく協力的な雰囲見える化気が広がった」と、荒井さんは言います。
ほかにも、年初めに新聞インタビューを通じて会社のスローガンを発信し、社長の想いを発信することにも取り組んでいます。
【これまで発表されたスローガン】
| 2018年 一歩前へ 2019年 心ときめく会社でありたい 心ときめく仕事をしよう 2020年 お客様よりお客様のことを考える 私たちのプロフェッショナル 2021年 〜ルール化 マニュアル化 見える化〜 2022年 ーMIERUKAー 見えるのMI 魅力のMI 未来のMI 2023年 〜「騒がしい会社になる」〜 2024年 モノを売るよりコトを売る コトを売るよりヒトを売る 2025年 圧倒的スピード感 |
2. 業務の見える化・仕組み化
愛和建設株式会社では以下のような取り組みを行っているそう。
- 社内ツールの活用(勤怠管理システムの導入による残業・休暇管理の簡略化)
- LINEワークスの活用(社内コミュニケーションと情報共有の効率化)
- 外部メンター導入(誰でも相談できる環境作り)
- 部署ごとの役割分担(現場体制のチーム化)
男性の育休取得を支えるためには、業務の属人化を解消し、誰が休んでもスムーズに業務が進む体制が不可欠です。
社内ツール等を上手に活用し社員同士の情報共有をスムーズに行うことで、男性社員が育休を取得しても業務が滞ることなくチーム全体でフォローし合える環境が整ったんだそう。
さらに、外部メンターの活用により若手社員や管理職の相談窓口も設けられ、育休取得やキャリアの悩みに柔軟に対応できる体制も確立されています。
また、工務の現場体制もここ数年で大きく進化しており、以前は1つの現場を少人数の担当者で回すスタイルが主流でしたが、現在は役割を分担する”チーム体制”へ移行しています。
このような業務の「見える化」と「仕組み化」は、社員同士の理解と協力を生む土台となり、結果として男性育休の取得促進につながるようになったそうです。
3. 役員層から長期休暇取得
愛和建設では、役員層を対象に年度初め「それぞれ1週間の休暇を確保する」ことを目標として掲げています。
この方針の背景には、コロナ禍で専務と常務が同時に休まざるを得なくなった際、会社が大きな混乱もなく業務を続けられた経験があり、その出来事が「休んでも組織は回る」という確かな実感につながったと横山社長は言います。
横山社長は続けて、「それぞれの事情に合わせて休める、”休みやすい雰囲気づくり”がこれからの時代は大事になる」と語り、まずは役員層が率先して実践することで、社員も安心して休める雰囲気を作っていきたいと話しました。
キーワード②「支援」のための取り組み
続いて、男性育休取得率100%を継続の背景にある、キーワード2つ目が「支援」です。
愛和建設株式会社では社員への支援として、具体的に以下の3つの取り組みを実践しています。
1. 独自の子育て手当てスタート
2. 資格の受講支援と資格手当の充実
3. 時短勤務・在宅勤務の導入
一つずつ解説していきます。
1. 独自の子育て手当てスタート
2022年から子育て支援の一環として「独自の子育て手当」を導入し、社員のお子さん1人につき月1万円の支給を行っています。
一般的な家族手当というと「扶養している子ども」に限られることが多いのですが、愛和建設株式会社の場合、子育て手当は子どもがいる全ての社員が対象で、扶養の有無は問わないんだそう。
「会社全体で子育てを応援する」という考えのもと、経済面からも安心して働ける環境づくりを進めています。
2. 資格の受講支援と資格手当の充実
社員のスキル向上を目的に、資格取得支援と資格手当の制度を整えています。
会社が認めた資格については、受験対策校の受講費用を一部支援。また、資格取得後には特別手当を支給しており、例えば1級建築士の場合は月8万円と大変高水準です。
さらに、社員のリスキリング支援として、子育てと両立しながら大学のイノベーションプログラム受講費用等も全額負担するなど、働きながら学べる機会を幅広く提供しています。
こうした制度により、社員が安心して”挑戦”できる環境が整っているのです。
3. 時短勤務・在宅勤務の導入
愛和建設株式会社では、子育て中の女性社員を中心に、時短勤務や在宅勤務など多様な働き方の導入にも早くから取り組んでいます。
現在では、育児に限らず副業やライフスタイルに応じた柔軟な勤務形態を推進しており、個別ヒアリングを通じて社員一人ひとりに柔軟に対応しています。
今後は制度化を進め、より多くの社員が安心して働ける環境づくりを目指しています。
目指すのは「家族も仕事も大切にできる働き方の実現」
「何か特別な施策をしたというよりも、さまざまな取り組みを積み重ねる中で“育休を取るのが自然な空気”になっていった」という横山社長の言葉通り、愛和建設株式会社では、男性育休取得率100%の継続は単独の取り組みではなく、日々の働き方改善や社員へのサポートの積み重ねで実現されたものです。
愛和建設が目指すのは「家族も仕事も大切にできる働き方の実現」
「育休は迷惑をかけるものではなく、当たり前に取得できるもの」という考えが、社員の働きやすさや安心感につながり、その結果、男性育休取得率100%の継続や社員の定着率・社員数の増加にも結びつき、会社全体の成長を後押ししています。
横山社長、荒井さん、今回は貴重なお話を聞かせていただき本当にありがとうございました。
◉ 時事解説「男性育休をめぐる現状について」

続いて行われたのが、「男性育休をめぐる現状について」の時事解説。
今回のセミナーの大きなテーマである「人的資本経営」。
その前提となっている、女性の社会進出・社会復帰、そして男性育休取得を目指す社会の変化(STEP1〜STEP3)について、弊社代表須田からみなさまへ情報提供させていただきました。
女性の社会進出が考えられたきっかけ STEP1〜STEP3

1985年の男女雇用機会均等法の施行以降、「平等」という考え方が社会全体で重視されるようになりました。
そんな中、女性の社会進出について注目される大きなきっかけとなったのが、アメリカを中心に世界的にでベストセラーになった著書『リーン・イン』です。
この本では、「女性が経営者やリーダーとして活躍すべきである」「女性の地位向上を目指すべきだ」という主張がされ、国際的にも注目されました。
しかしすべての女性が同様に地位向上を達成できるわけではないのではないか(再現性がないのでは?)などと議論されたのが STEP1 の段階。
その後日本では『仕事と家庭は両立できない?』という本が出版され、家庭と仕事の両立についてさらに議論が深まりました。
女性が地位向上を果たすと、今度は男性が家庭に入る(いわゆる主夫になる)ケースが増えます。
しかし、男女の役割が入れ替わっただけでは社会全体の状況は大きく変わらず、「本当の意味で仕事と家庭を両立するにはどうすればよいのか」という根本的な課題が残されたのが STEP2 の段階です。
STEP3 になると、日本人著者による『育児は仕事の役に立つ』という本が登場します。
この本では、仕事と家庭を別のものとして捉えるのではなく、”共通するスキルを活かすことが重要である”ことが示されています。
育児では日々、さまざまな判断や調整、家族内での役割分担やチームワークが求められます。
つまり、育児を通じて得られるスキルは、職務上の能力向上にもつながるということです。
具体的には、チームワーク・複数の作業を同時に進める力(パラレル思考)・コーチング・主体性・アンガーマネジメントなど、家庭と仕事の両方で活用できる「共通した能力」が多く存在していることがわかります。
以上、STEP1〜STEP3 の流れを見ると、女性の社会進出・社会復帰や男性の家庭参加が進む一方で、社会的な仕組みにはまだまだ改善の余地があり、企業においては、男女問わず社員が家庭と仕事を両立できる制度や環境を整備することが必要であることが分かります。
そんな中秋田県では現在、家事・育児の分担状況を可視化するチェックシートを導入し、家庭内での役割明確化を促す取り組みも行われています。
美の国あきたネット
人的資本経営と今後の課題と展望
少子高齢化の進行により、人手不足は今後さらに深刻化すると見込まれています。
リクルートワークス研究所の試算では、2040年には約1000万人の労働力が不足する可能性が示されており、この状況下では、新たな人材の「採用」だけに頼るのではなく、現在働いている社員の能力向上やチーム連携の強化によって生産性を高めていく必要があると言えます。
人的資本経営とは、社員を単なる「コスト」ではなく企業の成果を生み出す「資本」として捉える考え方のことです。
社員が成長し組織として協力体制を築き、少人数でも高い成果を出せる仕組みを整えることがこれからの時代、さらに求められていきます。
この考えにおいては、育休や研修も「休暇制度」や「教育制度」として消極的に扱うのではなく、社員の仕事力を高めるための投資として位置付け、戦略的に活用することが重要であり、今後の企業経営は社員数が減少していくことを前提に効率的に業務を回す体制作りが欠かせません。
つまり、社員の育成や働きやすい環境の整備は、組織の持続的成長に直結するということ。
加えて、家庭や育児で培われるスキルも重要な能力として認識し、一人ひとりの強みを最大限に生かすことがこれからの企業に求められる姿勢と言えるのです。
◉ パネルディスカッション「男性育休のリアルと企業の視点・ともに考える働き方の未来」

続いて行われたパネルディスカッションでは、男性育休取得推進を進める側の経営者と人事担当者、育休を取得をする側の男性社員の方に登壇していただきました。
それぞれの立場から見える視点が交差し、会場全体で「働きやすさ」について深く考える良い時間となりました。
登壇いただいた企業様
| 社会福祉法人 水交会 |
| 株式会社斉藤光学製作所 |
| 株式会社セブン・イレブン-ジャパン |
| 愛和建設株式会社 |
司会進行・・・株式会社なんで・なんで 代表取締役 須田紘彬
「制度はあるのに使われていない」問題
企業側から多く挙がったのは、「育休の制度の存在が社員に十分に伝わっていない」 という問題でした。
就業規則に明確に記載があっても、
- 自分が対象になると思っていなかった
- 手続きの流れが分からず不安
- そもそも説明を聞いた記憶がない
といった理由で、取得につながらないケースが想像以上に多いという実情が語られました。
制度を整備するだけでは不十分で、“どう伝えるか”“どう理解してもらうか”という周知の仕組みが極めて重要であるという点が、登壇者間で共通認識として浮かび上がりました。
取得を後押しするのは職場より「家庭」だった
男性育休を実際に取得した方の体験談では、取得を決めた一番の理由として「妻の強い後押し」 があったことが紹介されました。
- 上司からの提案
- 人事からのサポート
- 家庭(配偶者)の希望と理解
この3つが揃って初めて「よし、休もう」と決断できたという話には、多くの参加者がうなずいていました。
育休は職場の問題だけではなく、家庭の価値観や夫婦のコミュニケーションに深く影響するテーマであることが改めて示されました。
「育休を支える側」の負担にも目を向けるべき
議論の中で特に盛り上がりを見せたのが、育休中の社員を支える現場の負担についてです。
- 人員がギリギリの部署では穴埋めが難しい
- 業務が属人化していると引き継ぎが困難
- 「申し訳ない」と取得をためらってしまう空気がある
「育休を取りたい人が遠慮してしまう状況を変えたい」という声を背景に、業務を適切に分担し、属人化を減らす仕組みづくりの重要性が強調されました。
業務の棚卸し・分担・仕組み化といった構造的な工夫が、育休文化を根付かせるためには欠かせないという認識で意見が一致しました。
パネルディスカッションを通して浮かび上がったテーマ
今回のパネルディスカッションでは、
- 制度の周知不足
- 家庭・職場双方の後押しの重要性
- 現場の負担と属人化の問題
- 企業ごとに異なる最適解
- 制度ではなく文化として根付かせることの重要性
といったテーマが次々と浮かび上がり、「男性育休は、制度の整備だけでなく、職場の文化や風土、そして日々のコミュニケーションにも深く関わる問題である」という共通認識が、会場全体で共有されたように感じます。
制度の有無だけに目を向けるのではなく、働き方が多様化する今、企業と社員が同じ方向を向き「安心して育休を取れる職場文化」をどう育てていくか?
今回のパネルディスカッションは、そのヒントに満ちた時間となりました。
男性育休は”目的”ではなく「手段」
今回のセミナーを通じて改めて感じたのは、「男性育休の取得推進」は1つの方法にすぎないということです。
愛和建設株式会社の事例からもわかるように、業務改善や社員の育成、働きやすい環境の整備など様々な取り組みを行った結果が、組織の持続的成長に結びついています。男性育休の取得率向上自体が目的なのではなく、様々な取り組みを行った結果として、組織の成長、そして男性育休の取得率向上につながっているのです。
働き手不足がより深刻化するこれからの時代、これまでように育休を単なる「休暇制度」として扱うのではなく、社員の仕事力を高めるための投資として位置付け、経営者側も、社員側も、戦略的に活用することが重要となります。
そのためには、単なる制度やルールとしてではなく、人の思いや職場の空気に深く根ざしたテーマだということを皆が理解し合うことも大切です。男性育休も、女性活躍も、ただ制度を整えるだけではなく、現場の声に耳を傾け、組織の成長のために何が必要なのか、皆が考えられる土壌を作ること自体が、これからの企業に求められる姿勢だと感じました。
今回のセミナーを通じて、組織のあり方や育休の意味など、そのつながりを改めて多くの方が考え直す機会となることを願います。
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