人事担当者向け

経営者の須田が男性育休を取って分かったこと

私、なんで・なんで代表の須田は、
2025年12月15日(月)から2026年1月23日(金)までの1月半ほどを男性育休取得いたしました。

私は経営者のため、雇用保険加入者対象の男性育休制度の対象にはなりません。
つまり、男性育休制度を取る金銭的なメリットは無いです。

ただ、この記事を書くために調べていたら、経営者の男性育休は個人ではなく企業への補助金があるようですね!

参考資料

両立支援等助成金(子育てパパ支援助成金)※中小企業向けの助成金

2025(令和7)年度 両立支援等助成金のご案内リーフレット(厚生労働省・都道府県労働局)

また、男性経営者が書かれているnoteもいくつか見つけたのでご参考までに!


当社は2025年度の秋田県の男性育休推進事業も受託し、企業の事例セミナーや、男性育休取得経験者のパネルディスカッションなどを運営いたしました。

その際のことも含めて、今回は長文になりますが、お読みいただければと思います。

関連記事:男性育休の取得率って重要⁈男性の家事・育児と組織の成長【秋田県】

0.なんで私が育休を取るのか

それは「産まれてくる子どもと、第一子の上の子の二人のために、自分が父親としてできることを全うしたい」という思いがあるからです。

育休の話となると、企業における業務の話や、夫婦間の仕事(≒ 家事・育児の分担)の話になりがちではないでしょうか。それよりも、私が私として、父親としてどうありたいかが強いです。もちろん人材育成をする会社の代表として、子育てが最大の人材育成であり、自分自身のスキルアップの要素もあります。

しかしながら、子と親という関係性の中で、「尊敬され、愛され、畏れられたい」と願っています。この子たちが、これからの社会において、SNSの誹謗中傷に負けず、学校生活の集団行動に飲み込まれず、競争社会において勝ちながらも搾取することなく、経済損得ではない優しさを持った自律した人間になるために自分には何ができるか。これが父親としての私の課題であり、模索し続けるところになります。

つまり、自分がどうありたいかを考えた時、子どもたちのよき父親でありたいと思ったのです。

1.なんで男性育休が推進されないのか

世の中のことを考えるためには、世の中の前提を揃える必要があります。男性が育休を取りにくい理由とはなんなのでしょうか。

過去に育休は男性が取るものではなく、女性が取るものとされていました。家事育児は女性の仕事とされていたからです。しかしながら、医学的にも出産後の女性の体、特に内臓と骨格においては、「交通事故にあったレベル」と言われ、1ヶ月は寝たきり安静とさえ言われます。いくら休業しているからといって、そんな状態で家事育児を1人で背負うのは非現実的です。

参考リンク:出産のダメージは車にひかれるのと同レベル? 産後ケアで変わる「出産後の常識」【小雪×斎藤睦美×稲冨幹也×宗田 聡】 – Woman type[ウーマンタイプ] | 女の転職type

男性の育休は会社に迷惑?

ところが、男性が育休を取るときに言われるのは「仕事はどうするのか」ということです。育休中の仕事を誰が行うのか、戻ったときにポジションがあるのか、休むこと自体が会社に迷惑をかけるという考え方です。これについては古い価値観であると言いきれます。

「仕事はどうするのか」は個人ではなく会社への問い

最初の理由としては、そもそも男性に限らず女性でも「仕事はどうするのか」という問いはつきまとうということです。昔のように、男性は出世をし管理職となり、責任ある仕事を任せる。女性は、お茶汲みを始めとした単純事務とし責任ある仕事を任せないという業務配分意識が透けて見えます。

最近では女性でも総合職や、管理職などが一般的になってきているし、仕事内容が単純作業だけではない仕事をしている人の方が多くなってきているのではないでしょうか。つまり、「仕事はどうするのか」という問いは、育休を取得する人が考えることではなく、会社としての仕組み作りに答えがあるようです。

属人化からの脱却がカギ

次の理由として挙げられるのがこの仕組み作りです。仕事を属人化させずに、共有すること。マニュアルというよりは「決定事項」・「検討プロセス」・「未決定事項」を共有することです。会社として定めるルールや規定ではなく、業務担当者の決定プロセスを記録すること自体の仕組みが必要と言えます。昨今ではNotionを使って、データベース化させることで、属人化から抜け出すことできます。

育休への反発や思考停止に経営者は気づいているか

以上のことから言えることは、「仕事をどうするのか」は男性だけではなく女性でも同様に抱える問題であり、女性が育休を取れてきた過去を考えると男性でも育休は取れるということです。ここに強いバイアスがあることを我々は認識しなければなりません。

男性が育休を取るときに出る強い反発感。業務上生じる負担は女性が取得するときも同じであるにもかかわらず、女性が取るときには「制度上しょうがないよね」と思考停止し、仕事の引き継ぎや業務量の負担は現場にのしかかっていることを経営側は考えねばならないのです。

人材不足で育休に足踏みは離職リスク

こうして、人材不足の現在、仕事量がこなせていない現場のマンパワーをこれ以上減らしたくない会社側としては、育休を認めることができない状態なのです。しかしこれは短期的な目先の労働力確保に過ぎません。

人材不足だからこそ、優秀でかつ、育児を経験して部下の育成力を上げられるコミュニケーション能力をもつ管理職候補を離さないためにも、育休を推進する働きやすい会社であるべきです。育休が取りにくいことで、離職されるリスクも考慮すれば、育休を取得して数ヶ月後に帰って来てくれることは、数ヶ月後の採用が確約したようなものと考えましょう。

2.会社の都合、夫の都合、妻の都合

以上より、基本的には会社は業務のマンパワーを減らしたくないという観点から、育休の取得には後ろ向きなことが社会背景にあります。

一方で、男性育休の推進をしている会社も最近では増えてきておりますが、その理由を考えてみましょう。まずは上場企業など、社会的責任を担うという観点により、男性育休率の公開など、株主ならび広く世間への情報の開示義務にあります。その結果、問いが「育休を取らせるべきかどうか」ではなく、「どのように取得率を上げるか」に代わり、目指すべき目標が変わっているのです。

中小企業で生じる労使間のねじれ

中小企業などは情報自体の公開性が低いことと、株主は社長もしくは同族によることが多いため、社会的責任への関心も低いように私は感じます。地方である程度の規模のある中小企業でありがちなのは、経営層は「社会的責任のため育休は推進する」と言っても、現場が回らないため中間管理職でストップがかかっている状態です。「取得したら、その穴は誰が埋めるのか」という問いはマネジメントをする管理職も考えなければなりませんが、採用するための賃金の低さや休みやすさは経営方針を示す必要があります。経営層と中間層、そして現場の意識のねじれによって企業内部での育休取得の難しさが発生します。

父親は育児休業に主体性と想像力を

一方で取得する本人はどうでしょうか。私が数名にヒアリングして共通する回答は「妻に言われたから」です。もちろん、育休の必要性は夫婦で話し合うことは大事ですが、あまりにも主体性が無いようにも感じます。奥さん側が「育休取らなくても大丈夫」と言ったら取得しないのでしょう。自分が育児にどう携わりたいか、子どもの成長から何を学べるか、それが仕事にどう活きるのかを知る必要があります。共働き世帯が多くなってきた昨今、奥さん側の仕事の穴が開くことについて旦那さん側はどう思っているのでしょうか。

育児休業中の連携が仕事に活きる

奥さん側の取得の理由は1点。それは体調を戻すということです。赤ちゃんのためではなく、奥さん本人の骨盤、内臓、子宮、血液量などが元に戻るために横になって療養する必要があります。これは座っているだけでも負担になるほどのダメージを受けているからです。産休からの育休の第一目標は、奥さんの体を労ることにあります。とすれば、旦那さん側は休まない理由などないのです。もし奥さんが大丈夫と言ったとしても。

奥さんはその間、家事の仕方や、細かな収納のこだわりなどを旦那さんに情報共有する必要があります。もしくは自分の家事のこだわりを捨て、任せきる必要があります。これもまたマネジメントの参考になります。部下や同僚に、自分のやり方や手順を押し付けるのではなく、別の方法でも結果が同じであれば良いとする。もしかすれば自分のやり方よりも良いやり方をしてくれるかもしれないと思うことです。

親子共に成長しあえる育休を

どれくらいの期間育休を取るべきか、という命題もあります。答えは夫婦によって、職場の状況によって違いますが、我が家の場合は、私が1ヶ月半、妻が3ヶ月です。育児ストレスもあり仕事や家の外に出ることが良い気分転換にもなります。私は子どもの泣き声が耳から離れなくなるようなノイローゼ傾向も少なからずありました。生後3か月で保育園に預けるのは少し早いところもありますが、上の子を見ていて、社会性や多様性、様々な成長トレーニング(箸の使い方、苦手な食べ物)などは保育園に非常にお世話になりました。

仕事でも、同じ職場の人に言われるよりも、たまに来る外部講師の研修の方が心に刺さることがあります。古い考えでは、保育園に預けるなんて親の教育放棄、育児放棄という考えの年配者もいまだにいます。子どもに向き合うためにも、それぞれの時間で親も子どもも成長しあえる環境の方が良いように私は思います。

3.逃げの選択肢

一方でネガティブな取得理由についても触れねばならないと思っています。それは「向上心なき育休」と私は呼んでいます。つまり休む口実になるということです。

向上心なき育休は身を滅ぼす

「妻に言われたので」を理由に、育休中も家事育児に主体的に関わるわけでもなく、言われたことだけを行い、時が過ぎて仕事に復帰する。仕事へのブランクがあり、業務量を捌けず、もちろん昇進もしない。育児を経験しても受け身での単純作業と化しているので、部下の育成やコミュニケーションについての応用も効かない。挙げ句の果てには、子どもの体調不良を偽り、休みがちになるということもありえます。自身の体調不良は、自己管理ができていないことを責められる可能性がありますが、子どもを理由にした場合は責めにくくなりました。頻繁に体調を崩す子も、熱を上げる子も、メンタル的に不調な子も個人差があるからです。

「休んでいる」は大きな誤解 育休は業務の連続

育児休業だからといって、「休んでいる」と思う人がいるのは、企業側でも取得者本人でもよくある誤解と言えます。出産直後の子どもの授乳やオムツ交換で寝不足になる奥さんのフォローをし、掃除・洗濯・食事などの家事を行い、「見えざる家事」と言われる買い置き計画や献立の計画などといった家事全般を業務と捉え、社会人基礎力に照らし合わせたスキルアップをしましょう。

関連記事:【キャリアデザインの基礎】⑤ 社会人基礎力

4.自分がどうありたいのか

結局は自分が「どんな親になりたいか」「成長した子どもに、どう思われたいか」が大事です。私自身は「子どもに心から信頼されたい」と思っています。進学の相談、恋の相談、就職の相談、そんな人生の相談をして欲しいと願っています。その時に「こんなことを言ったらどう思われるんだろう」と顔色を伺って欲しくないのです。「赤ちゃんの時から、ずっとあなたのことを想っているよ」という言葉を信じてもらいたいからこそ、育休を取り、向き合うことにしました。

赤ちゃんの時間はほんの数年。子どもとして関わるのも10年くらい。それ以上になると学校や友達が優先されるようになるでしょう。成長が著しく、首がすわったね、寝返りできたね、歩けるようになったね、いっぱい言葉を覚えたね、そんな瞬間に立ち会いたいと想っています。去年から10年日記をつけ始めました。上の子の日記です。そこに下の子が追加されます。下の子が出来て、上の子がこんなにも成長したことを毎日感じられます。その成長が嬉しくて、寝顔を見ながら一人泣いています。

5.経営者が育休を取るということ

男性経営者が育休を取得することは、家庭・組織・社会的な側面で多くのメリットを有しますが、同時に経営運営や収入面での課題も存在します。補助金については通常の男性育休の補助金は無く、会社への補助のみとなります。

そのため、男性経営者が育休を取るためには幾つかの条件が必要です。

  • 自社は「経営者不在」に耐えられる構造か
  • 権限と責任は適切に分散されているか
  • 働き方の価値観を誰が体現しているか

そして、経営者である以上、緊急時の連絡や、業務上の判断が必要なこと、やむを得ない実務など、短くとも1日のうちで仕事に関わる時間が必須です。組織の規模や、現場のマネージャーに任せられるところと、経営判断が必要なことの指標を分けて明文化する必要があります。

なんで・なんでの経営者育休

当社の場合は、LINE Worksで会話ベースの質問などを投げつつ、事業の進捗や議事録などは全てNotionに載せています。そのため、「検討事項」「背景」「決定事項」が分かりやすいだけでなく、売上管理から、個人のto do、事業スケジュールまでを一元管理しています。わざわざ報告用に書くのではなく、それぞれの個人が事業の状態をメモしたものが、社内で共有されているため、「あれどうなった?」を聞く前に見るだけで状況が把握できるのです。

育休を「どのように取るか」問う時代に

経営者の育休は、家庭・会社・社会にとって、今の状態を見つめ直す絶好の機会と言えます。今回、私も育休を取得してみて、社員の成長や会社としての情報整理が数年前より格段に上がったことを実感しています。一方でまだまだ自分がやるべき仕事や、属人的な業務も分かりました。子どもの成長に向き合えたこと、家族が穏やかでいること、会社の変化など、「取るべきか、取らないべきか」という議論ではなく、「どのように取るか」の選択肢が増えることを願っています。