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アドラー心理学③:三角柱
2024.06.21
アドラー心理学は、オーストリアの心理学者アルフレッド・アドラーによって提唱された心理学の一分野です。前回の「アドラー心理学②:目的論」に続き、今回は「三角柱」について解説します。
アドラー心理学は、自己啓発やカウンセリング、コーチングの分野で広く知られています。その中でも「三角柱」の概念は、自己成長や問題解決において非常に有効です。この記事では、そんなアドラー心理学の「三角柱」について、具体的な実例を交えながら説明します。
三角柱の基本構造
アドラー心理学の「三角柱」は、三つの面から成り立っています。それぞれの面には以下のような内容が書かれています。
- 悪いあの人
- かわいそうな私
- これからどうするか
この三角柱は、カウンセリングや自己分析の際に使われ、狭まりがちな視点を広げるためのツールとして機能します。
「悪いあの人」と「かわいそうな私」という2面を見ている状態から三角柱を回転させ、「かわいそうな私」と「これからどうするか」の2面を見るようにするのです。
三角柱の効果
この三角柱の効果は、過去の出来事や他人の行動に囚われることなく、未来に向けた建設的な思考を促す点にあります。これにより、自己成長につながることや、多角的な視点を得て問題解決の糸口になることが期待できます。
実例①:コロナ禍での行動
例えば、コロナ禍で行動が制限をされ、授業や部活、修学旅行など、青春を経験できなかった学生たちが自分たちの学校生活を不遇と捉えていたとします。「悪い環境」と「かわいそうな私」という2つの面で捉えることも1つの事実かもしれませんが、「じゃあどうする」の視点を持てるかどうかでその時代の過ごし方が変わります。コロナで友達と遊べないと嘆くよりも、オンラインセミナーに参加したり、海外の友達を作り英会話の練習をするなど、コロナ禍だからこそできることも少なからずあるはずだからです。
実例②:職場での人間関係
また、職場での人間関係に悩んでいる新入社員Aさんがいるとします。Aさんは上司から教えてもらう機会が少なく、不満を持っています。この時Aさんは「悪いあの人」と「かわいそうな私」という二つの面に囚われています。しかし、カウンセラーが三角柱を使って「それではどうしたらよいと思いますか」という面に焦点を当てるよう促すことで、Aさんは「自分から聞きに行こう」という問題解決に向けた具体的な行動を考え始めます。
実例③:家庭内の問題
次に、家庭内の問題に悩む専業主婦のBさんの例を考えてみましょう。Bさんはハードワーカーな夫とのコミュニケーションの時間がとれず、「悪いあの人」と「かわいそうな私」という二つの面に囚われています。しかし、三角柱を使って「これからどうするか」という面に焦点を当てることで、趣味を見つけたり、パートに出るなど、Bさんは自分の時間を大切にすることで不満を解消する具体的な行動を考え始めます。
目的論とのつながり
このように「三角柱」を使って、他者を変えるという観点ではなく、自分ができる、自分がどうするか、という視点を持つことが重要です。
ここにつながってくるのがアドラーが主張する「目的論」です。この目的論でもプラスの面とマイナスの面が見えてきます。プラスの面としては、「目的論」を使うことで未来に向かってポジティブに具体策を考えられることです。一方、「目的論」を通して見えるマイナスの面としては、人は自分に都合のいい言い訳を作り出しがちだ、ということです。このネガティブな意味のことを原因思考といい、アドラーは強く批判をしていました。例えば、学校の授業や仕事など、気が乗らないものに対しては、多少の体調不良でも大げさに休みを主張します。しかし、旅行やライブなどの楽しみなものの場合多少の体調不良でも無理して参加したいものです。
詳しくは:アドラー心理学②:目的論
まとめ
アドラー心理学の「三角柱」は、自己成長において非常に有効なツールです。過去や他人に囚われることなく、未来に向けた建設的な思考を持つことができます。