人事担当者向け
デザイン思考とは
2024.07.23
デザイン思考は、デザインを学んでいない人でもデザイナーの頭の中と同じようにものごとを構築・構成する考え方です。20世紀後半にスタンフォード大学などで発展し、デザイン系のコンサルティング会社で活用されビジネスの世界に広まりました。このアプローチは、ユーザーのニーズを深く理解し、その理解を基に新しいアイデアを創出することを目的としています。
デザイン思考のプロセス
デザイン思考のプロセスは通常「共感」「定義」「アイデア発想」「プロトタイピング」「テスト」の5つのステージに分かれます。
1.共感
ユーザーの体験やニーズを理解するために、観察やインタビューを行います。情報としての知識ではなく、フィールドワークや当事者へのヒアリングなど、実際のその場で体験・体感をするということが重要です。
マクドナルドに良い例となるエピソードがあります。ある時マクドナルドはアンケートをもとにしたヘルシーメニュー路線を取りましたが、売れ行きは悪く失敗。そこからジャンキーメニューへ転換し売り上げを回復させました。これは表面的なヒアリングでは、消費者が知識として持っているヘルシー=良いという共通認識しか拾い上げることができなかったということです。本当に消費者がマクドナルドで欲しいものは何か、実際には何を選んで食べたか、という現場の状況を理解する必要があったのです。
2.定義
観察結果を基に、問題を具体的に定義します。これは、結果に対しての原因の仮説を考えることです。フィールドワークやヒアリングなどで見えてきた課題という結果に対して、何が原因なのか、という仮説を複数考え、複数の仮説について方法論を考える必要があります。
例えば、人手不足に悩む企業が、それはなぜなのかということについて考えるとします。離職が多い原因について社内アンケートを取ると、最も多い回答は賃金が低いことでした。その結果、賃上げを実施したものの、離職は止まらず、実際の離職の理由は人間関係にあった、というようなことはよくあることです。
3.アイデア発想
問題に対する解決策をブレインストーミングします。実現可能性についてはおいておくことが重要です。ぶっ飛んだ考えをできる人を褒め、もうアイデアが出ない、というところからさらにいくつかのアイデアを出した時に、常識の枠を外すことができます。
ブレストのカギはアイデアを出し尽くした後の細分化と再定義です。例えば、「おいしい食べ物」 を考えた時に、リンゴをリンゴだけでなく「ふじ」「つがる」「紅玉」という風に分けることで、アイデア量を増やすことができます。また、「おいしい」や「食べ物」を再定義することで、昆虫食や宇宙食などの発想に至ることができるかもしれません。
4.プロトタイピング
最も有望なアイデアを具体的な形にします。ブレストで出た実現可能性が低いアイデアをどうすれば実現可能になるか、という調整作業です。これはスキルや資本などパワーを得ることでアイデアを実現しやすくすることと、アイデア自体の突拍子の無さを下げることで実現しやすくすることの両面を指します。「本当にできないのか」と失敗経験をすること。その失敗の原因を分析した時にスキルや資本などで解決をしないという結論になった場合、アイデア自体の突拍子の無さを下げるという結論が必要になります。
例えば、コスプレイベントをしたいと思った時に、どんな会場でどれぐらいの規模でやろうかと決め切れないことがあると思います。判断基準が無いので、まずはプロトタイピングとして1,000人規模の会場で実施をしてみます。その結果、混雑しすぎてもっと大きい会場がよかったのか、場内がガラガラで小さい会場が良かったのか、がわかります。デザイン思考を用いない場合、このプロトタイピングで失敗したとき、そのアイデア自体が良くないものだと捉えられてしまいますが、デザイン思考ではそもそも、テストの前のプロトタイピングなので、失敗したところに学びがあるのです。
5.テスト
プロトタイプをユーザーに試してもらい、フィードバックを基に改善します。
アプリゲームなどは常にこの段階にあります。商品をユーザーに実際に使ってもらいながら、新しい機能やイベントなどの開発による改善を行うのです。
デザイン思考は、上記で触れた事例以外にもビジネスから教育、医療までさまざまな分野で応用されています。例えば、企業は新しい製品やサービスの開発に、学校はカリキュラムの設計に、医療機関は患者ケアの改善にデザイン思考を活用しています。
メリットと課題
デザイン思考には多くのメリットがありますが、課題も存在します。
- メリット: 創造的な問題解決、ユーザー中心のアプローチ、コラボレーションの促進など。
- 課題: 初期の導入が難しい、時間とリソースが必要、全ての組織文化に適応するわけではない。
効果的にデザイン思考を導入するためには、組織全体での理解とサポートが重要です。