人事担当者向け

【キャリアデザインの教科書⑧】補助線6 組織との関係

【連載】キャリアデザインの教科書 第8回「組織との関係」

リクルートワークス研究所による報告書「新しいキャリア論ハンドブック 8つの補助線から考えるキャリアデザイン」を読み、代表須田が今感じること、考えることを語る全10回の連載企画。

最初から読む:第0回 キャリアデザインとは

前回:第7回 補助線5 キャリアの仮面

人材業界におけるアルムナイとは

アルムナイという言葉は、人事業界では「出戻り採用」のような文脈で使われることが増えてきました。関係が悪化した退職ではなく、あくまでも個人のキャリアの成長段階において、会社がフィールドを準備できなかった時など、退職後に経験を経て、再度入社する人のことです。

記事の本文では、アルムナイをより広く定義し、独立した退職者を委託先にするなど、ビジネスパートナーとしての関係も含んでいます。いずれにせよ、在職時の仕事ぶりや人間性などを評価していることが前提のように思います。

図表28の解説

アルムナイ意識:転職経験がある人

プレ・アルムナイ意識:転職経験がない人

この調査では2つのグループ間にアルムナイ意識以外に転職経験の有無でも差があるので、アルムナイ意識による純粋な比較にはなっていないと思いますが、おそらく言いたいことは、転職経験がある人の多くは、前職と関係悪化による転職をしているのではないか、ということです。転職経験がない人は、行動に移すほどの不満がないと思われるので、そこまでなネガティブな感情を抱いていないのでしょう。

図表29の解説

組織コミットメントの高・中・低で分類分けをすると、活躍できている高群ほど、離職しても再度入社したいという数値が高く、低群ほど離職後には関係を持ちたくないという結果になっています。この調査だけから言えることは少ないですが、組織へのコミットメントを作るのは、仕事でパフォーマンスを出すことなのか、それとも関係性を築くことなのか、ほかの要素なのか、一考する価値があるはずだと思います。

組織のコミットメントと関係性の質

組織論の基本ともいえるMITのダニエル・キム氏の「成功の循環モデル」にある通り、このアルムナイの組織コミットメントを高めるものは、関係性の質に始まる、と言えるのではないでしょうか。

それを踏まえ、企業側ではなく個人のキャリアを形成するうえで、退職した前職を悪者にするのではなく、自分がどのようなマインドチェンジや行動、仕事への工夫などができたか、振り返ることも重要です。

関連リンク:ダニエル・キム 成功の循環モデルとは?

もしあなたが転職を考えているのなら…

もし今、仕事が辛くて、転職を考えている人がいるとすれば、転職をしても同じことを繰り返す可能性があります。仕事を責任をもってやり遂げることや、ゴマをすってでも人間関係を身に付けること、どんな手を使ってでも結果を残すという覚悟など、今できないことは転職をしてもできるようにはなりません。

今、会社に居づらい原因が自分の能力不足や関係構築不足なのか、パワハラやセクハラと言ったハラスメントがあるなどの、企業組織の問題なのか、今一度原因を見つめなおし、自分の努力で変わることなのか、そのような問題ではないことなのか、見定めることが重要になります。新しい経験やポジションを求め、転職をし、転職が失敗だったとしても、関係性を築いている元の会社に再入社できるような状態の時が転職のベストタイミングです。

次回:第8回 補助線6 組織との関係